Flower(フラワー)事例紹介

このエントリーをはてなブックマークに追加

お客様との接点を多く保つことで、ブランドをより知ってもらい、商品にもっと興味を持ってもらえる。
SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」のフューチャーショップとポイント顧客一元管理ASP「CROSS POINT」のアイルが共同開発した「futureshop omni-channel with CROSS POINT」は、店舗とECの顧客を一元管理し、相互送客を可能にしたSaaSサービスだ。
開発段階からアイデアを提供していたレディス専門店「flower (フラワー)」を運営するソラオブトウキョウを交え、新サービスの導入効果、ネットと店舗との相互送客、将来のオムニチャネル実現までを語ってもらった。

会員数増加の相乗効果 139.6% 136.0% O2O導入後、EC×店舗の相乗効果で売上・新規会員登録数共に130%超の成長

EC化率13.7%flowerのオムニチャネル戦略・序章

「会員カードをなくそうからスタート」

戸田宗輝ソラオブトウキョウGM: アイルさんとのお付き合いは10年近くになります。まずは基幹の販売・商品管理システムの導入からで、3年前にはPOSシステムを導入しました。実はその時点から「ポイント共通化」と「顧客の見える化」の希望をお伝えしていました。当時は、顧客管理とポイントサービスを店舗で配布するリライト式の会員ポイントカードで行っていましたが、問題は会員登録の煩わしさでした。店舗でお客様に会員登録用紙に書いていただき、そこから顧客情報を店舗スタッフが手入力するのですが、お客様をレジ前でお待たせしてしまうし、記入ミス・入力ミスも多い。店頭業務も滞っていたので、まずカードシステムを変えなきゃと考えていました。さらに商品情報と顧客情報がひもづいているシステムがあれば、顧客の動向分析まで出来ます。そういった要望をアイルさんと共有していました。

鈴木誠ソラオブトウキョウWEBチーフ: 13年前から自社ECを始めていたのもあります。ECと店頭のポイントシステムが別なのは、やはりお客様にとって不便です。13年4月にポイントシステムをPOSと連動させ、その1年後の14年6月にECまで連動したフューチャーショップとアイル共同開発の「futureshop omni-channel with CROSS POINT」を導入して、ポイントと会員を一元化しました。

山本浩孝アイル取締役: ソラオブトウキョウさんには、POSシステム導入後から「こんな機能が出来たらいい」といった開発のヒントをいただいていました。顧客とのかかわり方、情報収集、コミュニケーション、業務改善まで、社のビジョンをお持ちでした。まず店頭のカードをなくすということが目標でしたよね。

戸田: 会員カードのコスト削減も見込んでいました。カードは費用が1枚200円ぐらいかかっていましたし、カードリーダーのリース料金も毎月かかる。そのコストもすごく無駄でした。

導入後、会員数が急増。店舗購入の7割が会員。

山本: CROSS POINTを導入していただいてから、わずか1年の間に、リライト式カード時代に5年間で獲得した会員数の3倍の新規会員登録がありました。会員数が1年で4倍になったということになります。しかも、ポイント獲得用のバーコードを取得するのみ(仮登録)でなく、メールアドレスや個人情報登録が必要な会員本登録率が73%。レジにて商品を購入した顧客の多くが、足跡を残していってくれるということです。この登録率の高さは、店頭でスタッフさんがしっかりメリットを伝えているからですか?

戸田: 店舗スタッフが会員に誘導する意識は高いですね。仮登録の時点ではポイントが利用できないので、必然的に本登録しなければならないことも理由です。現在、店頭で購入しているお客様のうち、約70%が会員です。客観的なデータがないため比較が難しいのですが、10人に7人が会員と考えると、会員率は高い方だと思います。今後は残りの3割を会員に変えていければ、さらにリピーター比率も上がると思っています。

星野裕子フューチャーショップ代表取締役: ソラオブトウキョウさんの場合、まずは実店舗のポイントシステムをCROSS POINTに移行され、その1年後に、ECサイトリニューアルのタイミングでポイント・会員一元化を実現されています。その時点でfutureshop omni-channel with CROSS POINTとなるのですが、導入後6カ月間を前年同期間と比較すると、新規会員登録数が130%も伸びています。flower(フラワー)は、この1年で横浜店とルクア大阪店の2店が開店し、店舗の売上を139.6%伸ばしていらっしゃいますが、それとほぼ比例してECの売上も136.0%の伸びとなりました。大事なポイントは、出店に連動して新規会員がECでも増えていくところ。ECは会員が増えれば、リピート施策が打ちやすいので、会員数に比例して売上は伸ばせます。数字をみても相乗効果は歴然です。そして、店舗でもECでも個客(※1)を認識できるベースが整ったことが最も大きな成果。店舗で会員登録したお客様もECでしっかりポイントを使ってくれていますよね。

戸田: 中心客層が20代前半なので、100円で1ポイントと還元率を高くしたことも、貯まりやすく使いやすいと好評です。商品単価はウエアで8000円ぐらい、アクセサリーは一番低いものが約800円。ポイント単価を高くして、服を買ってもらう策もありましたが、高校生や大学生には、まずアクセサリーを買ってもらって、次第に服を買ってもらえればと思っています。ちょっと背伸びして買いたいブランドでありたい。ポイントは貯まりやすい設定にして、その分買ってくださいねっていう意味合いも込めています。

地方客も結構多くて、地方から都市部に出てきた時に店頭で買って、その後にECで購入する方も多い。店舗がないエリアにも会員がおられ、北海道は約120人、九州約300人。今後の出店場所の参考にもなり、実際に15年4月に福岡に出店します。EC化率は約13.7%ですが、地方に出店することで、周辺の県も含めて囲い込み、あと5%ぐらいアップすればいいなと思っています。

鈴木: 休日に店舗に来てポイントカードを作ったものの、次に店舗に来られるのが半年後というお客様が多かったのですが、地元でECから購入しても、ポイントが使えるようになったことで、ずっとファンでいてもらえる仕組みが出来ました。ゆえに、利用率も上がりますよね。

戸田: 店舗業務の改善も大きい。登録作業は店頭のQRコードをお客様がスマホで読み込み、会員登録専用ページで本登録してもらう形ですから、情報が正確になりました。レジ前でお客様が渋滞してしまうこともなくなり、ポイントもカードの残りをそのまま引き継げるように開発していただいているので、お客様にとってもかなりの利点だったと思います。

誰を優待すべきかが明確になる

山本: ECとの一元化を実現した6月以降の6カ月間のデータを見ると、店舗とECの両方を買いまわっている客と店舗利用だけの客との購入単価はそれぞれ10800円、8900円と、それほど大きな差は出ていないのですが、購買回数が実に興味深くて、店舗とECの両方の利用客は4.1回。店だけの利用客 は1.63回、ECだけの利用客は1.55回であるのと比較すると、極めて高い数字なのです。さらに両方利用している人は複数店舗を買いまわっていることも分かりました。例えば、新宿のルミネエストとルミネ池袋を行ったり来たりされている。

戸田: 月1回ペースでフェアなどのイベントを企画している効果も大きい。リピート率が高いこともありがたいです。RFM分析(※2)をすると、これまでは店頭だけでのリピート率が2、3カ月に1回だったのが、今では1.5~2回に高まった感覚があります。

星野: ECだけ見てもすごくリピート率が高い。当社のクライアント全体の傾向は、1年間で3回以上購入する会員が17.6%というのが平均値ですが、ソラオブトウキョウさんはこの6カ月で16%の会員が3回以上購入している結果になっています。買いまわっている人が誰で、全体の何%存在するのかが見えるということは、誰を優待すればいいのかが分かるということです。ロイヤルティマーケティング(※3)の第一歩としてすごく重要です。優良顧客にどんなサービスをすれば喜んでもらえるかを考えることが出来ますし、ロイヤルティの高い顧客をあと何%増やすにはどうすればいいかを考えることも可能になる。PDCAが回りますよね。例えば、当社のサービスではそんな顧客に特別にクーポンが発行できたりします。そういうサービスはECにとても大事だと思います。

戸田: 今までは店舗用のクーポンを渡していたりしましたが、今はクーポンコード(※4)を付けてECでも使えるようにしたため、EC利用を促せるようになりました。

トップダウンが理想。EC部署と店舗の一体感が鍵

星野: ソラオブトウキョウさんが会社として課題解決意識がすごく高く、組織力があることも強みですね。店頭では、スタッフがお客様に会員になるメリットをしっかり説明しておられる。

鈴木: スタッフも効果をすごく実感しているからでしょう。

山本: ブランドGMの戸田さんとEC責任者の鈴木さんが、しっかりコミュニケーションをとって一体運営されている。他社では組織的にECの部署と店舗の連携がとりづらくなっていることもあります。

鈴木: オーナーの北嶋正則社長は米国に在住していて、普段からECでよく買い物していて、米国事情を体感しています。米ブランド・ショップのメルマガも読んでいて、「返品対応はしておくべき」や「ネットで買い物して、店頭に取りに行けることがアメリカで普通にできているのに、なぜ日本では出来ないのか」などの指摘をされます。実体験で分かっているので、私たちが「こうしたい」と提案すれば、信頼してやらせてくれることは大きいですね。

やれることは無限に広がる

山本: 12月19日にflowerの会員向けスマホアプリをリリースしました。開始1週間のアプリ利用者数は2000件と出だしは好調です。これからのコミュニケーションツールはスマホですから、アプリを介して顧客とのコミュニケーションを更に増やしていくことができます。お客様は購入履歴やポイントが確認でき、店舗はプッシュ配信で最新情報を送る。スタッフのコーディネートもチェックできるようにします。

会員化促進を店舗スタッフが頑張ると、オムニチャネル化も進みます。ECで買われると店長や店舗スタッフはモチベーションが下がってしまう場合もありますが、今後は自分のコーディネートを通じてECで買ってもらうと、そのスタッフの評価につながる仕組みまで作りたい。スタッフの頑張りが「見える化」されると、オムニチャネル化がもっと進むと思っています。オムニチャネルの肝は店舗スタッフにあると思っています。

戸田: 店頭とECの両面での分析をもっと進めて施策を打ちたいですね。返品交換のサービスを路面店だけでも可能にしたり、店頭の入荷情報をアプリでお知らせできたり。

鈴木: ECだと、どこから流入してきて何をクリックしたかが明確に数字で分かる。しかし店舗はそのデータが出ない。でも、アプリによって、来店しただけで顧客情報が入手できたり、手に取った商品が分かるようになるなど、可能性はいっぱいある。ECのレコメンドが、店舗でも出来ればいいですね。

星野: オムニチャネルは今やどこの企業も「やらなきゃ」と思っていますが、まず実現したいことは何か、優先順位は何かを明確にすることが重要です。一方でまだ成功パターンや参考になるデータが現れていないのも現状。やるとなるとトライアンドエラーの繰り返しになりますから、最初から大きな投資をするのはリスクになります。初期投資を抑えた同サービスをご利用いただくことで、大手企業と同等のeマーケティング戦略を打ち立てていただきたいと思っています。消費行動の変化をコントロールすることはできません。しかしいち早く準備することはできます。より顧客志向に、より愛されるブランドになっていただければうれしいです。

用語解説

ナチュラルガーリーなアイテムを中心に、女の子を楽しむファッションを提案。

記事PDF(繊研新聞 平成27年1月16日号記事より抜粋)